9月17日~18日、長野県の雑魚川へ行ってきました。この川に棲むイワナは私のお気に入り、とってもきれいな色をしたイワナなのです。雑魚川は放流のない渓流釣り場として全国に知られています。ほとんどの支流と上流部は種沢として禁漁区となり、そこからイワナが増え放流がなくても釣り場が成り立つ良いモデルとなっています。そして今回の釣行で驚いたことがありました。それは外来種のケイソウによる川底の被害です。これほどまでにひどい状態になってしまうのかと思わせるミズワタクチビルケイソウの繁殖、これ以上他の河川に広めないよう一人一人が正しい知識をつけないと大変なことになってしまう。そう感じさせる状況でした。
雑魚川でテンカラ1日目スタート
気温は15度、ウェーダーを使用
流石に9月中旬、朝の気温は15度とかなり冷え込んでいました。ウェーダーを持ってきて正解でした。この季節寒暖差が激しいのでウェットスタイルと両方を用意したほうが良いですね。昼になると一気に気温が上がるのは解っていますが、やはり体を冷やすとケガにもつながりますから注意が必要です。
1尾目は朱色の薄いイワナ
私がこの場所に入渓するまで3人の釣り人をやり過ごしました。ラッキーなことに上流に入っていた3人は枝が結構被っているような区間でしたのでちょうどよくテンカラ向きな区間に入れました。釣りを始めて1尾目がでたのは30分後、その前に1尾バラシてますのでようやく顔が見れた感じです。1尾目は小ぶりなイワナでやや紫がかった体色に腹のオレンジ色はほとんど出ていないイワナでした。2日間釣りをしましたが、このタイプのイワナは結局この1尾だけでした。ちなみにパイロット毛鉤(最初の様子見毛鉤)はエルクヘアカディスの#10です。
高原ならではの渓相
解放感のある平坦な流れ
奥志賀高原の岩菅山系、西に焼額山などからの水を集めて流れ出し切明で魚野川と合流する雑魚川。落差がなく平坦な流れが大半を占めるため遡行しやすい渓相です。あまり河原が存在しないのも高原特有の流れで、河畔林が迫っている流れが続きます。こうなるとポイントを一流しするだけでイワナがでるようになります。何度か流すこともなく釣りのテンポも早くなります。テンカラの本領発揮といったところです!
周りには高い山もなく開放感のある景色
高原特有の解放感のある流れはまじかに山が迫っていないためです。山林と青空に囲まれた景色は高原ならではです。たまにこういう景色の中で釣りをするのもよいと思います。川が蛇行していなければ写真のように遠くまで流れが続く景色となります。テンカラ竿を振っていて気持ちがよいものです。昔、職漁師が次々にイワナを掛けている光景を想像しただけでテンションも上がります。
寒暖差が活性に影響
高原ということは寒暖差が大きいということにもなります。朝方、放射冷却でぐっと冷え込んで、太陽が昇ると一気に気温が上昇します。この日も朝と昼の気温差は10℃以上となりました。朝は少し厚手な上着を着用し、暑くなってきたら脱ぐようにしましょう。上着をしまうデイパックなどを背負っていくとよいでしょう。
9時過ぎになると一気にペースアップ
トンボが飛び出すタイミング
午前9時頃をすぎるといっきに気温が上がりだします。日が差してくるタイミングです。すると今まで一尾も飛んでいなかったトンボが飛び出しました。また他の虫たちの活動も活発になるのか、その時間に合わせるようにイワナの活性も上がります。
同じポイントから続けて出るイワナ
ポイントによっては続けて出ることもありました。1尾釣り上げて写真を撮りもう一度キャストするとすぐに次が掛かります。2畳分くらいのポイントですが、数尾着いているくらい魚影が安定しているのでしょう。よいポイントでは力の強いイワナが一番いい場所に着きます、そのイワナが釣られてしまうと2番手のイワナがそこへ入る感じです。
ポイントは両極端でした。
①水面が鏡のような岸際で石が入るポイント
この日、雑魚川では大きくポイントが2通りに分かれた感じでした。一つは岸際の水面が鏡のような緩く浅いポイントです。おそらく岸際の石が適度な大きさがあり、少し複雑な入り方をしていたためそうした場所に居着くイワナがいたと思われます。こうしたポイントからは少し小ぶりなイワナが中心に釣れました。
②底石の入った流れの芯
そしてもう一つが強めな流れの中です。渇水ということもありますが少し強すぎていないかな?と思うような流芯からも出ました。もちろん流れの中にいるイワナの方がサイズもコンディションも良かったです。イワナ=緩いポイントはセオリーですが、それに囚われてしまうと釣り逃してしまう状況でした。川底の石がしっかりしていて、見た目よりも底付近の流れの中に居着ける場所があるからだと思います。
金色に輝く天然イワナたち
実際に見ると写真よりもっと鮮やかな色をしているので、ぜひ釣りに行って見てほしいイワナです。奥志賀、下流の地域である秋山郷などの水系ではこのようなイワナが釣れてくれます。色鮮やかで筋肉質のがっしり体系のイワナです。雑魚川ではこのイワナが放流による他の遺伝子が混じることなく保護されています。
流れも細くなり一日目終了
高原らしい林間の流れも細くなり緩い開きからは小さなイワナが走ります。瀬に毛ばりを流すとすぐに小ぶりなイワナが飛びつきます。のんびりした時間もあっという間に過ぎてしまいました。少し早いですが寝不足なので昼過ぎに退渓しました。
湯田中駅前温泉楓の湯
駅前の温泉へ行き駐車場に車を止めると、いきなり懐かしい車両が目に入りました。湯田中駅前温泉楓の湯の駐車場からパチリ。この線路の左側にある建物が日帰り温泉です。それにしても学生時代よく池袋駅で見かけた車両にこんな長野の温泉駅で出会うなんて不思議な感覚です。
雑魚川2日目
9寸のイワナが浅い平瀬から飛び出す
2日目、前日より下流へと入ります。道路がすぐ脇に沿っている区間で人もより多く入っていそうです。案の定入ってからアタリが遠そうな感じがしました。浅い平瀬が続く場所を定位しているならここと思う筋だけ歩きながら一流し、適当に飛ばしているとハリスが止められます。あわせた感触に少し重さを感じさせたのは9寸越えのイワナでした。足首が被る程度の平瀬から予想外のうれしい一尾でした。
浅すぎて竿抜けだった?
今年は渇水でこうしたポイントにも居着いていたのか、それとも遡上途中なのか、その辺はわかりませんが人が入っているポイントほどこうした竿抜けが大事になる。改めてそう思う一尾でもありました。
あたりは遠いが流れに着く美しいイワナがポツポツヒット
2日目に入った区間は落ち込みや淵が多く、そうしたポイントからはあたりが出ませんでした。やはりエサ釣り向きのポイントではあたりが遠い感じです。初日同様に早めな流れの中からあたりがでました。やはり竿抜けとなっているポイントです。
落ち込みからのアタリはほぼ無し
結構落ち込みのポイントが多くある区間、そこからはあたりがでないため。瀬を中心に釣りをしました。落ち込みでは粘らずに一流しするだけにします。見た目はすごく出そうなポイントなのですが日ごろからエサを落とし込まれているポイントだと思います。前日にもエサ釣りの方が入っているのを見てますし、入りやすい場所ですから。
いい色をしたイワナで上がり!
もう少し時間がかかると思っていましたが釣ろうと予定した区間があっという間に終わってしまいました。もう少し水量があればポイントも増えてより楽しめると思うのですが、今年の渇水はひどい状況です。ただ最後にきれいなイワナが釣れてくれました。これぞ雑魚川のイワナといった美しさです。
今回のタックル&毛バリ
ロッドはシマノ渓流テンカラ34-38ZL。レベルライン3.5号4m、フロロカーボンハリス0.8号1mです。毛ばりは、初日の朝エルクヘアカディス#10ではじめましたが、反応はいまいちと感じました。流れが速い筋に入っているイワナが多いため水面を早く流れる毛ばりでは喰いにくいためバラシや出ても乗らないなどが増えると思ったので。なので沈めて流す毛ばりのほうが有利、10colorsの甲斐胴黒虎花笠#10、ゼンマイ胴黒花笠#10がよかったです。
ミズワタクチビルケイソウには要注意!
川底一面に綿のようなケイソウが大繁殖
もともと北米に繁殖するミズワタクチビルケイソウ、釣り人のウェーディングシューズのフェルトなどに付着して日本にもちこまれたと考えられます。美しい流れをまるでヘドロがなびくようなひどい状況へと変えてしまう恐ろしいケイソウです。イワナの写真を撮ろうにもケイソウがかぶってない浅瀬をみつけるのも困難な状況でした。また毛ばりにもまとわりつきいちいちとるのも大変でした。もしこのケイソウが日本全国に広がってしまったらと考えると恐ろしいですね。
ミズワタクチビルケイソウを殺藻する3つの方法
日本の美しい渓流を守るためにもひとりひとりの意識が大切だと思います。自分のホームグランドとしている渓流や生まれ育った川が一面このミズワタクチビルケイソウで埋め尽くされたらと想像するとぞっとします。そうならないためにはしっかりと殺藻することが大切です。
濃度5%以上の食塩水に1分以上浸す
まず濃度5%以上の食塩水(1リットル弱の水に対し食塩50g)をバケツなどに作ります。私は帰宅してからウェーダー、ウェーディングシューズ、ランディングネット、手袋を1分以上浸して殺藻しました。大き目なたらいなどがあるとやりやすいかもしれません。特にフェルト部分などは念入りにやりましょう。
60℃以上のお湯に1分以上浸ける
60℃以上のお湯に1分以上浸けます。給湯器などがあると便利ですね、こちらもバケツやたらいなどにお湯を溜めてそこへケイソウが付着していると考えられるものをしっかりと浸けましょう。
濃度50%以上のエタノールで消毒
道具の水気をよく切ってから濃度50%以上の消毒用エタノールをしっかりと吹きかけます。フェルトなども十分に吹きかけてください。
しっかりと殺藻して渓を守りましょう
雑魚川などミズワタクチビルケイソウはすでに日本の各地の渓流に広がっています。これ以上拡大させないためにしっかり殺藻しましょう。石に居つく水生昆虫にはかなり悪影響があるとたやすく想像できます。そうなればイワナやヤマメの餌が著しく減少しかねません。渓流釣りをする人は釣種を問わず覚えておかなくてはならない知識だと思います。