渓流用ウェーダーの選び方

私が釣具店に努めていた時、純粋に渓流釣りを始めたい、山へキャンプに行くついでに食べられる魚を釣ってみたいなど様々な動機でお店に来られる方がいらっしゃいました。ただ多くの方がウェーダーは無くてもいいだろうと思っているのが現状で、はじめからウェーダーについて下調べをしてこられる方はほとんどいませんでした。ここでは渓流釣りにはウェーダーが必要で、ではどんなウェーダーを選べばよいかを説明していきます。

渓流釣りにはなぜウェーダーが必要なの?

ウェーダーを履いて安全な釣りをしよう

渓流釣りでは渡渉を繰り返し、遡行し新しいポイントへ進みます。川へ入るとわかりますが、水の中にある石や岩には苔が付着して大変よく滑る状態になっています。ウェーダーの靴底はそういった場所でも滑りにくい素材でできています。フェルトやフェルトにスパイクピンが打たれているピンフェルトなどが一般的です。まずは滑って転倒しないためにウェーダーが欠かせません。

ウェーダーを履くメリット

滑らないように履くのはもちろんですが、春や秋では水温も低く、濡れたまま釣りをすると低体温症などになりかねません。ウェーダーを履くことで体温を逃がさない役割があります。また河川敷や河畔林の中では刺を持つ草木、毛虫なども多く、それらから身を守ってくれるのもウェーダーの大きな役割です。ウェーダーを履くことで色々なメリットがあります。

ウェーダーの素材と特徴

ナイロンウェーダー

ウェーダーの素材でもっとも低価格なのがナイロン素材のウェーダーです。1万円以下で購入できるため、予算の少ない方や使用頻度が少ない方などにおすすめです。ナイロン素材は低温だと硬くなりゴワゴワした感じは否めません。また透湿性がないため、必ず蒸れてしまいます。気温が高い季節には汗の逃げ場がなく、中に着ているウェアーが濡れてしまうほどです。蒸れてしまうことを前提に購入した方が良いでしょう。

透湿性素材のウェーダー

代表的な素材ではゴアテックスなどが有名ですし、日本のメーカーでは東レのエントラント素材なども使われています。またグローブライドやシマノなど釣具メーカーも独自の素材名で透湿性防水素材のウェーダーを発売しています。透湿素材は蒸れにくいのが一番の特徴です。人間は必ず汗をかきます、その水分を外に逃がしてくれる透湿性のあるウェーダーは非常に快適です。また生地自体も柔らかいものが多いので着心地や動きやすさが良いのも特徴です。しかし、生地が薄いということは穴が開きやすいということでもあります、膝や、すねの部分を補強している物もありますが、いばらなど刺のある樹木などには注意が必要です。

ネオプレン素材のウェーダー

ネオプレン素材は保温性に優れ、温度を伝えにくいことから冷たい水に入っている時間が長い釣りなどに向いています。湖に立ちこんだままの釣りや、渓流釣りのジャンルでは本流釣りに多く使われます。本流釣りでは水の抵抗が少ないスリムウェーダーとソックスタイプのフィットウェーダーなどが多く使われます。どちらも体にピッタリとフィットしているのが特徴です。透湿素材ではなく、また体にフィットしていることから、長時間歩くなどの釣りにはあまり向いていません。

ウェーダーの形状と選び方

ヒップウェーダー

ヒップウェーダーは足の部分だけとなっています。左右の足がそれぞれ独立しており、履いたあとはズボンのベルトを利用してずれ落ちないようにして使用します。水深が浅く、膝くらいまでしか浸からないような釣り場に向いています。渓流釣りではほとんど使われませんが、放流場所のみ釣りをしたりする時、熟知した釣り場で渡渉する場所などが浅い所しかないような時にはおすすめです。蒸れも少なく、脱ぎ履きも楽なことがメリットです。

ウェストウェーダー

その名と通りウエスト部分までのタイプとなります。メーカーによってはウエストハイウェーダーとして、ウエスト部分より少し高めにできているものも多くあります。ウエストタイプではサスペンダーを使用せず、ウエストベルトだけで使用できるタイプもあります。渓流釣りではウエストハイの方が人気がありますが、たまにある深いポイントに対応できることが人気の理由です。

チェストハイウェーダー

チェストハイウェーダーまたはチェストウェーダーはその名の通り胸までをカバーしています。腰まであるような水深でも対応できます。こちらも渓流釣りでは人気のウェーダーです。夏場など汗をかきやすい季節はかなり蒸れてしまいますので、予算が許すのであれば透湿素材のタイプがおすすめです。

スリムウェーダー(フィットウェーダー)

スリムウェーダーはネオプレン素材で作られています。保温性に優れ、長時間水に浸かるような釣りでは体温の低下を防ぎます。また体にフィットするように作られていますので、水流の抵抗が他のタイプよりも少なくなります。ブーツの部分が一体化されているものをブーツフットタイプ、防水のネオプレンソックスが一体化されているものをソックスタイプもしくはフィットウェーダーと呼んだりします。

ブーツフットタイプの特徴とメリットデメリット

初めてウェダーを購入する際、ほとんどの方がブーツフットタイプを選ばれます。その一番の理由が価格です。ブーツフットタイプの方が低価格のものが多くなるためです。ブーツフットでは靴の部分がはじめからついているため、購入してそのまま使用できます。また脱ぎ履きがらくで、短時間の釣りや、移動の多い時などは大変便利です。

ソックスタイプのメリットデメリット

ソックスタイプのウェーダーはベテラン向きと言えます。価格も高額のものが多くなり、生地も透湿性ある高機能のもの以上からラインナップされます。またネオプレンのスリムウェーダータイプもソックスタイプは高額となります。ソックスタイプのウェダーではウェーディングシューズを別に購入する必要があります。アユタビというネオプレン素材で作られたものも使用できますが、デザイン的にはネオプレンのスリムウェーダーを合わせた方が良いでしょう。ソックスタイプのメリットはやはり歩きやすさです。長時間の釣りや移動距離の長い釣りには歩きやすいソックスタイプとウェーディングシューズの組み合わせがおすすめです。デメリットは高額であることと、脱ぎ履きの面倒なことです。

渓流釣り向けのウェーダー

渓流釣り向けウェダータイプ

渓流釣り向けのウェダーはウエストハイもしくはチェストハイのタイプがおすすめです。ヒップウェダーはよほど浅い場所しかないような熟知しているような河川では使用できますが一般的ではありません。ネオプレン性のスリムウェダーは基本上流へと釣り上がる渓流釣りでは足への負担が大きくまた通気性も悪いためおすすめではありません、しかし移動距離も少なく、体力のある方などで解禁当初の水温の低い時期では使用しても良いと思います。靴底はフェルトタイプもしくはピンフェルトタイプがおすすめです。

渓流釣り向け最初の一着におすすめのウェーダー

試しに渓流釣りを始めるという方におすすめする最初の一着はナイロン素材のフェルト底のブーツフットウエスト(ウエストハイ)タイプです。価格も低価格です。本格的に長く続けたいという方には同じタイプでも透湿性能のある蒸れにくいタイプが良いでしょう。これらのタイプは一般的な釣り具店でも入手しやすいと思います。

本流釣りにおすすめのウェーダー

本流釣りにはスリムウェーダーです

本流釣りにはスリムウェーダーがおすすめです。水流の抵抗が強い本流では一般的なウェーダーは抵抗が大きく危険が伴います。思わぬ事故にならないためにも本流釣りではスリムタイプを使用しましょう。また保温性も高いため立ち込んだまま攻めるポイントでも体が冷えにくくなります。

本流釣りの夏はアユタイツがおすすめです

本流釣りで使用するスリムウェーダーですが、ネオプレン性のため、水から上がっているときは大変熱くなります。そのため同じネオプレン製でもブーツやソックスの部分がない、アユタイツを使用することがおすすめです。シューズはアユタビやアユ釣り向けウェーディングシューズを合わせます。濡れてしまうスタイルですが汗だくで熱中症の危険を伴うよりは快適に釣りができます。

まとめ

渓流釣りは美しい景色の中で美しいヤマメやイワナに会える楽しい釣りです。安全で快適に釣りをするためにまず必要なのがウェーダーとなります。自分のスタイルに合ったウェーダーを選んでぜひ渓流釣りを楽しんでください。無理な渡渉や深みへの立ち込みなどは大変危険ですからご注意ください。