釣具屋の元店長が渓流のエサ釣りにおける増水後の大型、数釣りチャンスを紹介します。渓流釣りは警戒心の強いヤマメやイワナなどを狙う繊細な釣りです。しかし、そんな魚たちがたくさん釣れてしまうチャンスが増水後のタイミングです。ビギナーの方でも大物が狙えるチャンスでもあります。ぜひ爆釣を体験してください。
増水後の渓流が良く釣れる訳
増水中や増水後は魚が動く
増水するとヤマメやイワナたちは普段いるポイントから離れ流れの緩い場所へ移動します。増水した押しの強い流れの中では定位できず、流されない緩い流れへと非難するのです。またお盆を過ぎるような時期になると産卵を意識した魚が上流へと遡上します。普段上がれないような滝や上がりにくい落ち込みなども増水のおかげで登りやすくなるからです。増水は釣りやすい所や分かりやすいポイントに魚を移動させるのです。
増水後はエサが豊富
増水後はヤマメやイワナのエサが多く流されます。よく雨上がりに道路に這っているミミズを見かけることはありませんか、渓流でもミミズや水生昆虫などが多く流されます。増水により多くのエサが流されることによって魚の活性もあがります。
増水後は濁りで釣りやすくなる
濁りが入るほどの増水では当然人の気配が薄くなります。普段透明度の高い渓流では人の気配がしただけで逃げてしまうヤマメやイワナですが、濁りのおかげで人に気づきにくくなります。また仕掛けも当然魚から見えにくくなりますし、仕掛けを振り込んだ時の着水音も魚から気づかれにくくなります。
増水後のエサの選び方
増水後の濁りはミミズやイクラがおすすめです
増水後の濁りが強い時、よくコーヒー牛乳なんてたとえもしますが、小さな川虫などをエサにしてもヤマメやイワナからは見えません。濁りのためみつけられないのです。そこで活躍するエサがミミズやイクラです。ミミズやイクラは匂いが強く、濁りが強い時ほど活躍してくれます。一尾食いつくと匂いが拡散され他の魚の活性も上げてくれます。
増水後の笹濁りは川虫やブドウ虫も使えます
増水後の渓流では強い濁りが徐々にとれ、透明度が出てきた状態を笹濁りと言います。笹濁りになると、ヤマメやイワナは川虫やブドウ虫などのエサも認識できるようになります。魚の活性も高いまま、仕掛けもまだ目立たない状況で釣りができます。
増水後の仕掛けの選び方
増水後のハリスは普段より太く
増水すると普段は仕掛けがとどかないようなポイントから尺イワナや尺ヤマメが出てくることもあります。また一つのポイントにイワナやヤマメが集まることもよくあります。関東近郊や人が入りやすい魚がスレているような渓流釣り場では細いハリスが有効ですが、増水時は0.6号や0.8号など太いハリスでも釣れるようになります。増水時は太いハリスで大物や数釣りに備えましょう。
増水後はハリも普段より大き目にしよう
ハリスと同じく、川虫に小バリ仕掛けなど、スレている渓流釣り場では細仕掛けが有効になります。しかし、増水後はハリスとのバランスや使うミミズやイクラなどのエサに合わせて太軸設計の大きなハリで尺イワナや尺ヤマメに備えましょう。せっかく掛けた大物にハリが伸ばされたり折られたりしないように準備しましょう。
増水後の狙い目ポイント
増水後は魚の避難場所を探ろう
増水後の濁りが入った状況ではイワナやヤマメたちはまだ避難したポイントに残っています。大淵、落ち込み脇のタルミ、ブッツケの巻き、大石の裏、岸際など流れの緩いポイントになります。水深が10~20㎝程のポイントでも濁りが入っていればアタリがでる確率は十分ありますのでエサを入れてみましょう。
増水後は魚止めを狙おう
増水後の魚止めは一番の狙い目です。魚止めとはそれ以上魚が遡上できない場所です。大滝や堰堤などです。こうしたポイントは誰でもわかりやすい好ポイントであるため、普段から多くの人に攻められています。ですから居着いているヤマメやイワナたちも非常にスレている場合がほとんどです。しかし、こうした魚たちも濁りのおかげで口を使いやすくなります。また産卵を意識して遡上してきたイワナやヤマメたちもそこでストップしています。大物が釣れるチャンスでもありますので仕掛けを一度チェックしてからエサを振り込みましょう。
増水後の渓流は安全第一で釣りましょう
増水後の渓流は里川がおすすめ
増水といっても台風や豪雨によるものもあれば長雨や梅雨時のものまで理由は様々です。釣り場に通い慣れている方であれば増水のしかたや度合いにより色々な想像や判断ができます。現場までの道のりにどんな危険な箇所があるか、釣り場にもどんな特徴がありどんな危険が予測できるかです。しかし、ビギナーさんではそうはいきません。渓流釣りでの安全は基本的に自己責任です。ビギナーの方は安全な里川から始めることで一番危険が少ない渓流釣りになります。入渓や退渓点も簡単に把握でき、遡行も無理せずでき、いざとなれば民家が近い、そのような里川の増水チャンスからチャレンジしてください。
増水後の渓流は浮石に注意
増水後の渓流ではグラグラした不安定な石が増えます。増水により石自体が流されたり、石の下にある土砂が流されたりすることにより起きる状態です。こういった浮石に飛び乗ったり勢いよく足を掛けたりすることで大けがに繋がる可能性があります。浮いているかもしれないということを頭に入れながら歩きましょう。また石と石の間に細かい小石や砂地があればその部分をなるべく歩くことで予防できます。
増水後の渓流は放水に注意
上流にダムなどがある場合、大雨や台風によりダムからの放水も気をつけなければなりません。ダムの放水は多くの渓流ではサイレンにより知らされます。サイレンが聞こえたら速やかに退渓して様子を見ましょう。私は一度企業の所有する発電所からの放水で危ない思いをしたことがあります。なんの放送やサイレンもなくいきなりの放水で水深は20㎝ほど上がり濁りが一気に入りました。たった20㎝の増水でも渡渉できる場所が深くなり濁りが入ったため大変な思いをしたことがあります。発電所付近ももしここで放水されたらどこに避難できるかなど周りをよく観察しながら釣りをすることをおすすめします。
釣れない増水もあります
雪代による水温の低下、春先の増水による落ち葉やゴミの流下、鉄砲水的な急激な増水など増水では釣れなくなることもあります。雪代の増水では水温が下がり、雪代特有の白濁りがきつくなり活性が落ちてしまうこともあります。解禁して初めての増水では場所によっては川岸に積もっていた大漁の落ち葉が流されます。私も雑誌の取材日に増水による落ち葉の流下で水色はよくても川虫エサが通用しない経験をしたことがあります。その時はミミズを持っていたので助かりました。鉄砲水的な増水では魚が流されてしまいます、2019年の台風19号により私のホームグラウンドの秩父だけでなく、長野、山梨、群馬、東京、神奈川の一部の渓流釣り場は大荒れとなり渓相も一変するとともに魚影も激減しました。
まとめ
増水後の濁りが取れていく状況、笹濁り状態は数釣り、大物との出会いなど渓流釣り師にとっては大チャンスとなります。私も楽しい思いを何度も経験してきました。しかし、大変危険が伴う状況でもあることから簡単に行ってきてくださいとは言えない釣りです。ベテランの同伴や安全に自信が持てるようになってから楽しみましょう。きっと思い出に残るヤマメやイワナがあなたの竿を絞り込んでくれます。