2019年の台風19号で観測史上最高の雨量を計測した埼玉県秩父地方では渓流釣り場も大打撃を受けました。実際に2019年の解禁日から数回竿を出し、2020年の様子と2021年について考察します。
2019年台風19号の被害を感じた2020年解禁日
秩父の荒川上流で竿を出すもアタリ無し
2020年の解禁日、私が狙ったポイントは放流の無い荒川上流部、普段人も少ない区間です。当然成魚放流目当ての人もいないですからのんびりと釣る予定でした。またこうした放流の無い区間は写真映えするきれいな魚が釣れます。釣りを始めて30分ほど、「あれっ?」おかしいと思い始めました、あまりにも生命感がないのです。もちろんアタリもありません。さらに進み、ここぞというポイントでもダメです。やはり台風の影響は思っていた以上だと感じた瞬間です。その後下流から遡行してきた3人グループの方とお話しをしましたが、やはりアタリも無かったそうです。
釣れそうな支流へ移動しようやくアタリ
やはり下流中流部やある程度の水量がもともとあるような場所はダメだと判断して、支流へ向かいました。当然ですが普段の流れが細い、すこしでも上流部のほうが集水する面積も少ないので魚も残っていると判断したのです。これが当たってようやくきれいなヤマメを手にすることができました。この日の様子は2020年3月25日発売の月刊つり人5月号に執筆しています。
2020年解禁日に見た浦山川周辺
浦山ダムの水色は一年経過しても濁ったまま
浦山ダムは薄茶色に濁った状態でした。この濁りは禁漁を迎えた2020年の10月でも残り、青白いような濁りが入っています。ダム下流では笹濁りの流れが出ている状態が長く続いています。ここまで濁りが取れないことは大変めずらしく、異常なまでの増水だったことがわかります。
浦山川の変貌はかなりひどい状況でした
解禁日の浦山川はひどい状況でした。流れは大きく変貌し、土砂で平らになった中心に細い流れがある状態です。淵も落ち込みもないような真っ平な流れで魚が居着ける状況でないのは一目瞭然でした。場所によっては重機が入り河川改修の工事が行われている状況でした。
大洞川も変わってしまいました
秩父の人気渓流釣り場大洞川の淵もうまりました
大洞川にも出向きました。この日はルアーの友人との釣行でしたので、先行してもらい私は後ろから竿をほとんど出さずに様子を見ていました。やはり大量の土砂が流出し、多くの淵が浅くなりました。ここ数年はいつも魚影の確認できたポイントもことごとく浅くなりヤマメの居着きにくい状態になっていました。
大洞川の魚影もかなり減りました
この日ルアーの友人には朝一に良型のヤマメのチェイスがありました。しかしその後はまったくチェイス無し、魚の姿を見ることができませんでした。この友人は渓流のルアー歴は20年近く、元釣具屋の店員ですから腕は信用できます。ルアーで午前中にチェイスが一回というのは台風の被害前では考えられない状況です。この日は二人組のエサ釣り師にも会いましたがやはりあまりアタリはない様子でした。大洞川はもともと放流の無い河川ですので、元の魚影の濃さに戻るには相当時間がかかると思われます。
小渓流の状況
横瀬川(芦ヶ久保川)の様子
横瀬川へは3月中に竿を出しました。この日は解禁まじかで人も多く、成魚放流を行ったポイントでは朝から粘るエサ釣りしも多く見かけました。私はあまり成魚放流に興味がないので、自然に育ったヤマメや発眼卵や稚魚放流からのネイティブに近いヤマメを釣ろうと探りを入れました。例年では混んでいる状況でも数匹はきれいなヤマメの姿を見ることができるのですがこの日は全くダメです。結局、一部の区間で2019年に放流されたと思う小さなヤマメの顔は何とか見れた状況で、やはり魚影はへっている感じを受けました。
薄川の様子
薄川の様子を見たのは大洞川で午前中に竿を出した帰りです。やはり成魚の放流ものはすぐに確認できました。しかし、例年であれば小型のヤマメが活発にエサを追う薄川ですが全くその気配はなく、小型のヤマメは確認できたものの魚影は薄くなっていました。
まとめ
台風19号の影響は今までに無いほど大きな影響をもたらしました。ほとんどの渓流釣り場で急激な増水によりイワナやヤマメの魚影に大きく影響をもたらしました。また渓相自体が大きく変化し、居着けるポイントが少なくなり、鳥などの天敵にも狙われやすくなったと思われます。荒川本流の尺ヤマメの釣果もかなりひどい状況でした。2021年の解禁は2019年から2020年に行われた発眼卵放流や稚魚放流の魚たちが順調に成長してくれれば回復を感じられるようになると思います。しかし、元の魚影に戻るまでには数年を要するのは間違いないのではないかと私は考えています。もし出かけられる際は秩父漁協のHPから放流状況を確認して出かけられると良いでしょう。